待望の『メランコリア』を見に行く。なんといってもラース・フォン・トリアーである。あの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の監督である。一番好きな映画でもないし一番良い映画だとも思わなかったけれど、あの衝撃はすごかった。あんな見た後に呆然としてしまうような息苦しさ、圧倒的な衝撃を予想していた。
ところが実際は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とは対照的。ものすごく静か。そしてすばらしい映像美。
プロットはほとんどない。メランコリアという惑星が地球に接近している。科学者たちはぶつかることはないと言っている。らしい。
こういう道具立ては普通はパニック映画やスペクタクル映画のために用意されるもんだ。でも、この人は違う。あくまで淡々と、森の中にすむたった4人の人間 のお話として描く。
前半は結婚式の描写。花嫁は奇妙な行動をするが、これがあとから思い返せば、ああ、彼女だけはわかっていた、というか感じていたのか、と納得がいく。ついで に冒頭のスーパースローの画面はすべて彼女があらかじめ見たビジョンだろう。
惑星の接近はあくまで背景にあるだけでほのめかされるだけ。それ自体が主題ではないのだ。そして最後を迎えんとするときにそれぞれがそれぞれの異なった態度をとる。そのことのほうが大事。
地球がなくなるなんてことは普段考えずにぼくらは生きている。考えても意味がないと考えの外に排除することで安心して生きている。でも、それはいつ起こるかわからない。そして、それが起こるとわかった時、自ら死を選び結末から逃避する人もいれば、家族と手を取ってワインを飲んで過ごしたいという人もいよう。主人公はそれをクソミソに言うのだが。
終わったあとに奥さんといろいろ話し合った。自分でだけでは気づけない発見がたくさんある。
こういう解釈がひらかれた作品こそ映画や小説の醍醐味である。
画面が暗く音楽がどことなく不穏でありながらも心地よく、淡々としているので寝そうになったが、耐えてよかった。
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