9日日曜日は芦屋さくらファンラン。毎年同僚Nのゼミと合同で、マラソンのあとのお花見をしているのですが、例年は桜が散っていることが多く、まあ屋外で飲み食いするだけでも楽しいとはいえ、桜がもったらなあ、と毎年思っておりました。
それが今年は桜の開花が遅れ、まさにこの日満開のタイミング!
なのに天気は雨予報!
これはいかんということで念を送りましたところ、朝9時ごろから雨は上がり午後にはお日さまも出てきました。
朝7時半集合にも5人の学生が来てくれて、マラソン走っている間に15名ほどの大所帯に。NゼミはOBや院生まで来てかなり賑やかになりました。
ハーフマラソンは1時間55分かかって、最近は走れてないし疲れてるしでどんどん遅くなっているのですが、練習してない割にがんばったと思います。キロ5分10くらいまで上がった瞬間もあったし。しかしもうそれ以上速く走れる気はしないな。前はハーフならキロ5分イーブンくらいでいけたのだが。寄る年波か。
午後から参加の学生もいるし、奥さんも途中から参加し、人狼ゲームしたりして楽しく過ごしました。
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素敵な面々 |
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いいかんじ | | |
が、夕方六時に近くなるとオッサンにわかに緊張。拙訳のエトガル・ケレット著『あの素晴らしき七年』が日本翻訳大賞の最終候補6作に残っていたのですが、ネットでの大賞の発表に先駆けて、受賞の場合は6時に電話連絡が入ることになっておりまして。ここまで残れただけでも僥倖なのですが、やはり最終候補にまで残ると「もしかして・・・」と期待もするのでありまして、なんか電話待つなんてドキドキするではないですか。そこでゼミ生たちに「緊張するから一緒にいて!」と頼んで、阪神芦屋のにしむらコーヒーで待つことに。10人くらい残ってくれました。
今年のゼミ生はみんな仲良くにぎやかでとても雰囲気がいいのであります。4回生が3回生を一生懸命和ませようとしているし、モチベーション高いし、期待大です。
そして、「文学」に関わる自分の仕事はできるだけ学生と共有して、オッサンがはしゃいだり照れたり興奮したりする様子を見せたい、それでなんか感じてくれれば結構、と思っているので、これはいい機会。
いよいよ六時。
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5時59分。気が気ではないオッサン。和ます若人たち |
鳴らない。ワタシのガラケーが、鳴らない。
「鳴らないねえ。でも、もし二人受賞だったら、一人目にかけているところかもね。そのあとに来るのかもね」
鳴らない。5分経過。
「こりゃないね」
「先生、まだ話し合ってるんじゃないですかね。この人ツイッタ―で審査開始って一時間前につぶやいてますけど1時間で決まらへんのちゃいます?」
「うむ・・・」
鳴らない。
「ないわ」
「いや、15分までは「六時ごろ」ですよ。待ちましょう」
鳴らない。
「ガラケーやから鳴らへんのかな?(笑)」なんて軽口で気を紛らわしつつ待つ。
鳴らないねえ。
「まあ、みなさんとこうやって一緒に待てて楽しかった!」
「いや、30分まで待ちましょう」
鳴りはしない。ここであきらめる。
「残念だけど、受賞ならなかったみたいです。でも一緒に待ってくれてありがとね」
と言って学生を送り出しながらも、電車の中でずーっとケータイを気にし続けるオッサンであった。
まあ、いいんです。はじめての翻訳でそうそううまくいっちゃいけないし、今日発表された受賞者の藤井さんや松本さんのように日本の翻訳文化に貢献してきたわけでもないワタシがもらったりしたら、「なんか違う」感が強いでしょう。ただ、ワタシの力は小さくとも、この黄色い「小さな巨人」の力は、やっぱり他の本に負けないと思うから、ちょっと悔しい。ケレットさんに「とったよ!」って言いたかったなあ。来年うちの大学に来てもらうときに「日本翻訳大賞受賞作の!」ってポスター載せたかったなあ。ま、「最終候補作!」でもいけるか。
でも、ここまでの旅で、ケレットさんには今まで見たことのない景色をたくさん見せてもらったし、それはきっとこれからも続くのだと思います。「writer-translator
teamになろう」って言われたあの日から、ワタシは彼に冒険に連れ出してもらいました。今まで行ったことのない場所に行ったし、したことのない経験をさせてもらいました。
今まで自分でしてきた仕事の中でも、こんなに誇らしい仕事はありませんでした。自分でほれ込んで、売り込みもして、それが本になって、そしてその本を大事にしてくれる読者の方々に届けることができた。最近よく思うのは、自分の仕事がなんらかの形で「世の中を豊かにする」ことに貢献できたらいいな、ということで、この仕事はその実感が自分史上最高でした。
ケレットさんとの冒険はまだまだ続きますし、ケレットさんの日本での躍進もまだまだ続きます。
出版社の皆さん!ケレットさんの短編の訳稿、母袋夏生さんのとこに、ヘブライ語からの素晴らしい訳がいっぱいあります!日本の読者が待ってます。出しましょう。
新潮社の編集の佐々木さんには改めて感謝です。校閲の皆さんにも大いに助けられました。
審査委員のみなさま、ありがとうございます。おかげさまでわくわくドキドキしてすごすことができました。
そしてなによりも、この黄色い本を大事に思ってくださった読者の皆さん、ありがとう。