2017年8月9日水曜日

ヴィスコンティ『若者のすべて』&ニコラス・ゲイハルタ―『人類遺産』at元町映画館

夏休みになって授業がないので毎週水曜のメンズデーを利用して元町映画館に通ってる。いつ行ってもおもしろそうな映画をやっている。そのうえ近所には安くておいしい店も多い。

映画を見るのは好きだけど系統立てた知識はないのでヴィスコンティも知らずに見に行った『若者のすべて』。いやあ、よかったなあ。脚本、セリフがとてもいい。ロッコ(アラン・ドロン)が娼婦のナディアに「信じる」ことの大事さを説いてせっかく二人の愛の世界ができたのに兄貴の「人間の屑」(名前忘れたが、ほんまに屑だと思ったので名演である)が嫉妬に狂ってナディアを犯し、もうここで終わるしかないじゃん、と思いきやそのあとがまた素晴らしい。ロッコが言う、故郷では家を建てるときに最初に通った人の影に石を投げた、それは「いけにえ」必要だからという話、この物語のいけにえはだれなのか?ロッコは自分を犠牲にしていけにえになる人だが、いちばんかわいそうなのはナディアであるし、ある意味「人間の屑」もいけにえかもしれず、母ちゃんもそうか、ああみんなそうなのか、と思う。弟チーロが言う「ロッコはみんなを許して聖人だけれど自分を守れない」ってセリフもグッと来た。人物の顔をフレームの右側に寄せて配置してクローズアップするあの撮り方ってたぶん、なんか呼び方あるんやろな。

『人類遺産』の監督の『いのちのたべかた』は見ていたので、それだけで観る。世界廃墟巡り、だと思う。というのもキャプション、ナレーションが一切ないのでどこの国なのかわからない。フクシマと軍艦島が日本なのはさすがにわかるが。すべてのカットがカメラ固定で20-30秒。視点は一切動かない。でも、写真じゃなくて映画ならではなのは、そこに静止画の中の動きと音が入り込むからで、どこに行っても風が吹き、どこに行っても草花が揺れ、どこに行っても鳥が鳴いている(ハエの音はちょっとあざとい気がした)。最初は「人間ってつくづく自然の邪魔して生きてるなあ」と思ったが、だんだんとそれも含めての「自然」だという気になる。「遺跡」だって廃墟なわけだし。

元町映画館が気に入って行っているのはやっぱり映画が見たいからで、そういえば最近新作ロードショーの映画を心待ちにして観ることがなくなっていて、はやくあれ観なきゃ、って映画は久しくない。アメリカも日本もマンガの映画化ばっかりで、映画は乗って楽しむアトラクションでしかなくって、感じて考えるものじゃなくなっていて、それでも別にええけど、ちゃんとした映画が見たい人には見れる場所が神戸にはあるってのがうれしい。

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