イギリスの文芸誌『GRANTA』の日本版でイアン・マキューアンの「言論の自由」を訳しました。
執筆陣が豪華です。
2015年3月31日火曜日
2015年3月2日月曜日
エトガルと新宿で 1
イスラエルの作家、エトガル・ケレットが先月25日から3月1日まで日本に滞在し、2つのイベントといくつかの取材をこなして帰国して行った。ぼくも東京まで会いに行き、イベントも参加した。彼のおかしな超短編に魅了され続け、なんとか日本の読者に届けたいと願ってきた身としては感無量の3日間であった。記憶がフレッシュなうちに記録しておきたい。
そもそもぼくがケレットの作品をはじめて読んだのはたぶん2007年か2008年のことだから、もう7,8年も前のことになる。"Crazy Glue"を読んで「ヘンなの(笑)」と思い、気になってネットで調べたらwikipediaにいかにもシャイそうな笑顔の男の写真が載っていた。
あー自分と歳も近いんだなあ。でも、イスラエルか、アメリカじゃないのか、じゃあ縁がないな、そう思った。ぼくは一応アメリカ文学研究者なので、アメリカの作家であれば研究の材料にするとか翻訳するとかいうこともあるかもしれないが、イスラエルだと関係がないし、それによく見てみると自分が読んだ「クレイジー・グルー」(瞬間強力接着剤のこと)はヘブライ語からの英訳だから、原文も読めない。それで忘れた。
ところがそのあとにも彼の作品を何度も目にすることになる。McSweeney'sなどで。「チーザス・クライスト」を読んで笑って、これ書いたの誰?と調べてみると見覚えのある名前である。ググってみると、またこのシャイそうな男の写真が出てきた。これはもう自分のための作家なのだと思った。自分はこの人が好きなのだと。
そこから英訳された作品を取り寄せて読んではどんどんハマり、そうするうちに世界各国で30以上の言語に訳されている彼の作品が日本では一冊も出ていないことに不満を感じるようになっていった。なんとかせねばと思って、知人のつてを頼り出版社に掛け合った。ヘブライ語から訳す人が誰もいないのなら英語からの重訳でもいいのではないか、やらせてほしいと。ケレットの存在しない日本より、多少意味が屈折していようともケレットの読める日本の方がいいと思ったのだ。
結果的に彼の最新短編集『突然、ノックの音が』がヘブライ語からの母袋夏生さんの訳で新潮社から出版されることとなる。ヘブライ語で訳せる人がいないのではなく、母袋さんもおそらくずっとこの才能を日本に紹介したいとはたらきかけてこられていたのだと思う。それを形にしてくれた新潮社にも感謝だ。
1年前、2014年の東京国際文芸フェスにケレットが来日すると聞いて駆けつけた。本谷有希子さんとの対談で、今や芥川賞作家の小野正嗣さんの司会だった。しかし当時はケレットの名前はほとんど日本では知られておらず、ということは会場の渋谷タワーブックスに集まったオーディエンスのほとんどは本谷さん、あるいは第二部の江國香織さんやジュノ・ディアスが目当てであり、ケレットさんの話を期待している人がいるとはとても思えない。これはケレットさんにはかなり厳しい状況だ。なんとか日本にも読者がいるのだと知らせたい。ぼくはお気に入りの短編集 The Bus Driver Who Wanted to be God を持参し、客席から本の表紙を掲げて見せた。あなたの読者、いますよ、と言いたくて。
ステージから表紙を見つけてくれたケレットさんはにっこり微笑んでこちらを指さしてくれた。よかった、と思った。最後にQAが少しだけあったとき真っ先に手を挙げて質問した。普段学会などではます質問することはないのだが、これまた使命感であった。
終わってからちょっとだけしゃべってサインをもらった。名刺を渡し、そこから交流が始まった。
*つづく*
そもそもぼくがケレットの作品をはじめて読んだのはたぶん2007年か2008年のことだから、もう7,8年も前のことになる。"Crazy Glue"を読んで「ヘンなの(笑)」と思い、気になってネットで調べたらwikipediaにいかにもシャイそうな笑顔の男の写真が載っていた。
あー自分と歳も近いんだなあ。でも、イスラエルか、アメリカじゃないのか、じゃあ縁がないな、そう思った。ぼくは一応アメリカ文学研究者なので、アメリカの作家であれば研究の材料にするとか翻訳するとかいうこともあるかもしれないが、イスラエルだと関係がないし、それによく見てみると自分が読んだ「クレイジー・グルー」(瞬間強力接着剤のこと)はヘブライ語からの英訳だから、原文も読めない。それで忘れた。
ところがそのあとにも彼の作品を何度も目にすることになる。McSweeney'sなどで。「チーザス・クライスト」を読んで笑って、これ書いたの誰?と調べてみると見覚えのある名前である。ググってみると、またこのシャイそうな男の写真が出てきた。これはもう自分のための作家なのだと思った。自分はこの人が好きなのだと。
そこから英訳された作品を取り寄せて読んではどんどんハマり、そうするうちに世界各国で30以上の言語に訳されている彼の作品が日本では一冊も出ていないことに不満を感じるようになっていった。なんとかせねばと思って、知人のつてを頼り出版社に掛け合った。ヘブライ語から訳す人が誰もいないのなら英語からの重訳でもいいのではないか、やらせてほしいと。ケレットの存在しない日本より、多少意味が屈折していようともケレットの読める日本の方がいいと思ったのだ。
結果的に彼の最新短編集『突然、ノックの音が』がヘブライ語からの母袋夏生さんの訳で新潮社から出版されることとなる。ヘブライ語で訳せる人がいないのではなく、母袋さんもおそらくずっとこの才能を日本に紹介したいとはたらきかけてこられていたのだと思う。それを形にしてくれた新潮社にも感謝だ。
1年前、2014年の東京国際文芸フェスにケレットが来日すると聞いて駆けつけた。本谷有希子さんとの対談で、今や芥川賞作家の小野正嗣さんの司会だった。しかし当時はケレットの名前はほとんど日本では知られておらず、ということは会場の渋谷タワーブックスに集まったオーディエンスのほとんどは本谷さん、あるいは第二部の江國香織さんやジュノ・ディアスが目当てであり、ケレットさんの話を期待している人がいるとはとても思えない。これはケレットさんにはかなり厳しい状況だ。なんとか日本にも読者がいるのだと知らせたい。ぼくはお気に入りの短編集 The Bus Driver Who Wanted to be God を持参し、客席から本の表紙を掲げて見せた。あなたの読者、いますよ、と言いたくて。
この表紙のpictographも大好きで、Tシャツにしたいくらいである。 |
終わってからちょっとだけしゃべってサインをもらった。名刺を渡し、そこから交流が始まった。
はじめて見たときはびっくりしたこのサイン |
2015年3月1日日曜日
第35回篠山ABCマラソン
とてもハッピーな3日間の東京出張から帰宅したのが前日夜10時。マラソンの準備はすでに出張出発前に整えてある。目覚ましをセットし、日焼け止めなど忘れていた小物を揃え、寝ようと思った12時過ぎ、奥さんの一言。「明日って雨なんちゃう?」 あ、その問題が。
思えばはじめて参加した5年前の2010年、小雨まじりのなか足下もずぶ濡れで、ゴールしたあと温泉で順番を待つ間もガタガタガタガタ体中が震え、カタカタカタカタ歯が鳴って、身の危険を感じたものである。あれはいやだなあ。しかも今回は体調も万全とは言い難い。
朝5時45分起床。神戸の天気は小雨。天気予報、降水確率100%。しかも大雨のマーク。体調、しんどい、ねむい。ということで断念。参加費も予約したマラソンバス代も無駄になったが、無理して体壊してもしょうがない。初めての出走断念であった。これにて今シーズンのレースは終了。
思えばはじめて参加した5年前の2010年、小雨まじりのなか足下もずぶ濡れで、ゴールしたあと温泉で順番を待つ間もガタガタガタガタ体中が震え、カタカタカタカタ歯が鳴って、身の危険を感じたものである。あれはいやだなあ。しかも今回は体調も万全とは言い難い。
朝5時45分起床。神戸の天気は小雨。天気予報、降水確率100%。しかも大雨のマーク。体調、しんどい、ねむい。ということで断念。参加費も予約したマラソンバス代も無駄になったが、無理して体壊してもしょうがない。初めての出走断念であった。これにて今シーズンのレースは終了。
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