2022年9月30日金曜日

エトガル・ケレット「サルマン・ラシュディ襲撃事件の2つの悲しみ」

今月の『新潮』に掲載。エトガル・ケレット「サルマン・ラシュディ襲撃事件の2つの悲しみ」。ページとステージの上は自由であるべき。


2022年9月20日火曜日

ノイマルクト劇場+市原佐都子/Q 『Madama Butterfly』at 京都ロームシアター

 市原佐都子、天才か!って思った。大傑作誕生の瞬間に立ち会った気がする。




 最初、舞台には女優1人でCGで投影される人物に向かって、日本人やから顔が平らで不幸、白人みたいになりたい、と愚痴る。CGは見た目より中身よ、と言うのだが、そんな美しい身体を持った余裕のある白人だけが言えるんや、だからワタシはハーフの子を産む、って宣言する。ここまでで相当ゲンナリする。なんや「日本人」「白人」って雑なカテゴリー、もっと多様でグラデーションがあることくらいわかっとけ、あとそのルッキズムなんやねん、しょーもな、って相当イライラきてもうこんなん見たくないな、帰りたい、くらいに嫌悪感を感じる。
 次にその女性がオリエンタル全開で白人米兵とセックスして妊娠という流れになるのだが、この米兵役が女性でかつ白人なのかよくわからない感じで、おや?と思う。
 すると舞台がガラッと開かれて、作家と役者の会話になり、ひとつメタの枠に話が拡張して、ここで作家は冬子という名の日本人なのだがアフリカ系でもある身体で、でも日本人的かわいさを求められたり売りにしたり、配役でもピッタリアメリカ白人に当てはまる役者がいないからフィリピン系のあんたを使わざるを得なかったとか、それぞれ別の言語でやりとりがあって、カテゴリー分けの暴力性を嘲笑っていた自分はこの多様性や複雑さ、ステレオタイプを求められる映画や舞台、その背景や苦労、そしてそのステレオタイプに擬態している人の思いまで考えて嘲笑っていたのかよ、と見ているこちら側が突きつけられる。うわあ!ってなった。
 その後上演舞台に戻ると「ハーフ」の子を産んだ母親は精神を病み自殺未遂をし、家庭は生活保護を受け息子はワキガで悩んでいる。ワキガの手術をしたい息子と整形をしたい母親。共に身体を変えることでコンプレックスを解消したいが、息子が自分の身体の匂いは自分ではわからない、と言うように判断するのは他者でありそれを内面化していては解決しない。ワキガとチンポのデカさと言うエログロ要素を持ち込みながら、それが笑いのためだけのネタではなく、人が自分であることの不可欠な要素として炙り出される。息子がLiNEでやりとりするチワワの女の子もそうで、自分のデカいチンポが日本人女性にハマるかという問題は、世界中の犬のメスがチワワでオスがセントバーナードだったら?という犬種の話に人種の問題が重ねられてハッと思う。
 ステレオタイプで人を判断したらあかんよ、とわかった気になってるお前はほんまにわかってるんか?って観客に突きつけるすごい舞台だった。京都は明日明後日しかなくて、その後は来週に豊岡。豊岡でもう一回見たいな。見とかないともう見られへんのやろな。最初から見て確認したいことがたくさん。
 あーすごい舞台だった!
 終わったあと興奮して3人で喋りつつ歩いてどこに行くかわからなくなりそうなのでタクシーで移動して、色々語り合う。同業の文学研究者と感想を交わすのは楽しい。論文書くより、こういうのしたほうがいいよ。
 3人で感想を語り合ったのち旅館に戻ってなんとかお風呂の時間に間に合う。湯上がりにロシアンブルーのリリーちゃん(11歳)をかまわせてもらい、写真を撮ろうと部屋に戻って下に降りたらもう居なかった。ネコらしくて、よい。和室は落ち着くし、客はワタシだけで静か。蚊取り線香の匂いがしている。最高か。


2022年8月9日火曜日

『ムード・ホール』

 福永信さんがずっと応援している映像作家カワイオカムラの作品『ムード・ホール』のSide B版が完成して、オリジナル版とともにYouTubeでも公開となりました。京都市芸大の@KCUAで展示を見たのが2016年の年末なのでもう6年も経ったのか。

劇場版公開時のパンフに私が寄せたコメントはこれ。


わかりたいあなたを追い込む緻密で精巧に作られた混乱。増殖し、反復し、反射しながらもどこかが違う。ずれていく。さあさお入り、踊りながら、走りながら、落ちながら。まずはホールに入ってみないことにはわからない。

オリジナルがこちらでSide Bがこちら。

2022年7月16日土曜日

神戸市外大での講演 「文学の遊び方、ワタシの場合」


 どうもFacebookとかすぐに友人知人に見えるものばかりになってBlogの投稿が3年も止まっているのを反省。19年のケレットさんの招聘イベントのことも書いてないし、そのあとコロナが始まって以降の"Outside"制作や温さん木村さんをお招きした2020年の授業やら諸々、書いておくべきことを書いていない。反省。ソーシャルメディアの閉じた空間だけではダメな気がするのでなにかあったらちゃんとblogに書こう。

昨日は学部時代の母校、神戸市外大の「米文学史」の授業にお招きいただき、「文学の遊び方、ワタシの場合」というタイトルで講演をさせていただきました。


懐かしき神戸市外大の様子。所々新しい施設はあるけれど原型は昔のまま。


パーラーはないしビールは売っていない(宝くじ同好会で百万円当てて学食でビールで乾杯した話も披露したぞ)。

楽しく講義させてもらいました。難波江先生がお一人で全て準備されていて、しかもハイブリッドでzoom同時配信にビデオカメラでも録画してYouTubeにアップということで、準備がむちゃくちゃ大変だろうし、送ったパワポも動画を載せたので6Gにもなっちゃってそこでもお手数をかけてしまいましたが、全てスムースに運営されていて、尊敬。


講義ではワタシの半生の反省から始まって、こうやって文学を楽しんできましたよ、というのをオースターの話、紙幣の話、ケレットさんや文芸イベントの話と繋げて行って、パワポ作りながら思ったけど、自分がやってきた(時として方向性がバラバラの)いろんな活動が線になって行くようで、自分の振り返りと今後の展望を考える上でもいい機会になりました。
学生たちがみな熱心に聞いてくれてかわいいのと、あと外大は2部もあるので2部の学生さんからの反応も嬉しかったし、茶話会に残ってくれた学生さんたちとのおしゃべりも楽しく、甲南での授業に出たいと早速メールをくれた子も2人いいました。
終了後は今年から着任された井上さんも交えての食事会でこれまた楽しかったです。
送ってもらった学生のコメントを見るとそれぞれ違うポイントで響いてくれたようで、嬉しいものばかり。普段の授業ではこんなコメントもらえないので、ゲストというのは役得ですな。
今はやりたいことはぼんやりしててもいいから、好きなことを大事にしてそれに導かれていけばいいよ、というのをメッセージとして送りましたが、この学生たちがみな自分なりの好きをカタチにしていってくれたらいいなあと願わずにはいられません。
結局ジャケットは暑いので、話の中にも出てくるケレッとさんイベントTシャツで変なおじさん風に登場してみました。

2019年8月10日土曜日

ジョージ・オーウェル『あなたと原爆』

拙訳のジョージ・オーウェル評論集『あなたと原爆』(光文社古典新訳文庫)が出ました。ファクトとフェイクの問題、ナショナリズムとパトリオティズムの問題、科学と人文学、スポーツとナショナリズム、ヘイトの問題等々、現代に射程を伸ばしたオーウェルの思想を集めたアンソロジーです。読んでくださって目が開く方がたくさんいたらいいな、って思ってます。

2019年6月10日月曜日

エトガル・ケレット &シーラ・ゲフェン 来日特設サイト

特設サイトの運営ともろもろ準備で忙しく、こっちのブログがお留守になっておりました。2019年の10月にケレット さん夫妻が来日します。イベントに出版に映画祭にと盛りだくさんの内容を準備中です。詳しくはこちらの特設サイトをみてください。

http://etgar-shira-jp.strikingly.com/



2018年11月24日土曜日

作家は「良いウソ」で闘う

ケレットさんの翻訳を介してつながった「未翻訳ブックレビュー」さん、11.17にも東京から来てくださいました。読み応えたっぷりの映画評です!「作家は「良いウソ」で闘う」。まさしく!http://kaseinoji.hatenablog.com/entry/keret-documentary?fbclid=IwAR27saVW9MDev8syFSKd9OCep-olUnle3XDiS8jNB6_doU6bgf3uA5ef1FU