2017年1月6日金曜日

エトガル・ケレット 「ヒエトカゲ」

今日から本屋に並んだ『すばる』2月号で、エトガル・ケレットの短編「ヒエトカゲ」の翻訳と解説を書いてます。トランプ政権3期目の悪夢を予見した怪作です。本屋で見かけたら手に取っていただければ幸い。
 
ポケモン関係は世代的にまったく経験がなかったので、院生の青木さんやFさんに相談に乗ってもらっていろいろ助言をもらいました。感謝。 



個人的に感慨深いのは(小説と翻訳の違いや分量の違いも大きくあるし、比べるのはおこがましいのではありますが)辻仁成さんと同じ号に載っているということで、というのもワタシは高校生時分彼のバンドECHOESの大ファンで、CDもVHSも全部持ってたし、(田舎なので年に一回くらいしか来なかったけど)ライブも行ってたし、今でも実家の部屋には彼のポスターが貼ってあるからであります。

ケルアックを知ったのも、On the Road と歌う"Jack"という曲がきっかけでした。

小銭を切らしてるきみも
タバコを切らしてる僕も
身近な愛をなくしている
僕らはこの街の失業者さ
持ち合わせのない愛を探し求めて
明日この道の上で
愛を切らしてるきみに

「持ち合わせのない愛」とか「愛を切らしてる」って表現にグッときたんだよなあ。今思えば、おまえはなんの愛がそんなに欲しかったのだ、と自分に問いたい気もしますが(笑)。さみしかったのでしょうか。

思えばはじめて『すばる』を買ったのも、辻さんが『ピアニッシモ』ですばる文学賞を受賞した時でした。文芸誌というものをはじめて買った瞬間です。

なので、その『すばる』と辻さんとこうしてご一緒させてもらうというのはなかなかに感慨深い。

高校生の自分にタイムマシンで会いに行って「おまえは30年後に『すばる』の表紙に辻仁成と一緒に名前が載るぞ」と言ってやりたい。さぞかしびっくりするのではないかと思います。

しかし、彼は心を閉ざして「はぁ?うっせ」とか言い返す、あるいは臆病を隠した睨みで応えるでしょうから、会いに行っても楽しくないだろうなあとも思います。

タイムマシン、なくてもいいや。

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