2024年1月21日日曜日

福永信「夢のなかの政治家の夢」

 『新潮』2024年2月号に福永信さんの短編「夢のなかの政治家の夢」が掲載された。現政権(あ、辞めた人もいるか)の閣僚たちの見る夢を描く。

現政権のメンツを見ていると、壺やら裏金やらで「こいつらは!」って気持ちになる毎日であるが、こうして同じように夢を見るニンゲンとして見ると、この人たちにも歴史や趣味嗜好があり、同じニンゲンなはずやしなあ、って気持ちになる。末尾に乗せられているような経歴のリサーチに基づいているのが面白いし、「夢」だとしたらそういう夢を見てる可能性は確かにあるし、でもそこにうっすらと戦争の影が滲んでいるのがまた怖い。イスラエルとパレスチナ、ウクライナとロシア、台湾と中国、そして右傾化して軍国化していく日本が、政治家たちの無意識に映り込んでいて、笑えたり微笑ましいと同時にうすら寒くも感じる。
 閣僚たちの経歴をリサーチしているのは、とにかく言語というおもちゃで遊び続ける福永さんのいつもの書き方とは違うなあと思ったが、それをリアリズムに落とし込むのではなく「夢」という可能性の世界に仕立て上げているところはやはり福永さんらしい。大変面白い。

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